【番外編】骨盤矯正とは!?
みなさん,こんにちは。
「マニュアルフィジオサロンあきは」のブログへようこそ!
身体の痛み治療のスペシャリスト
“認定徒手理学療法士”の齋藤賢一です。
今回のブログは女性の方必見です!!
特に産前・産後で骨盤の歪みが気になる方や骨盤矯正にご興味がおありの方は尚更です!
※非常に長文となりますので,覚悟を持ってお読み下さい(笑)
町を歩いているとよく見かける,
「骨盤矯正はおまかせ!」
「当店で是非骨盤矯正を!」
整体院や接骨院などの“治療院”における一つの売り文句ですよね!!?
中には,骨盤矯正さえすればすべてOK的な治療家(施術家)も存在しますが,,,
最初にお断りしておきますが,当サロンでは『骨盤矯正』は当たり前です。
(もちろん必要のある方には,です!)
ということで,今回のテーマは,『骨盤矯正とは!?』です。
CONTENTS
◇骨盤の構造と機能の理解
◇骨盤の歪みって?
◇骨盤の歪みと症状との関係
◇骨盤の矯正方法
産前・産後の女性,腰痛や骨盤帯痛をお持ちの方を中心に,骨盤の歪み(骨盤マルアライメント)を有するクライアントはたくさんいます。
骨盤は非常に奥が深~い構造と機能を有しています。
中途半端な知識と技術で,“なんちゃって”『骨盤矯正』では,良くなるどころか,逆に症状を悪化させてしまう可能性も高いのです!!
矯正すべき側や方向を見誤ると,,,
当然,効果なし!!です。
最近では,「骨盤ダイエット」なんていう言葉も聞いたりしますが,『骨盤矯正』にダイエット効果があるのかは不明です(笑)!!
『骨盤矯正』は当たり前と言いました。
ただし,一つの治療手段であり,選択肢の一つであるという意味です。
さらに,それだけで完結することはまずありません。
“骨盤の歪み”に付随する様々な機能障害も合わせて評価し,適切な対処をしなければ,『骨盤矯正』をしても,また歪みます。。。
“骨盤が歪んでいる”
→正しい位置に(強制的に)矯正をする。
(世間一般のやり方です,,)
→これでは,すぐに戻ります!!
(また歪みます,,)
では,どうすれば???
◇骨盤の構造と機能の理解
まずは,解剖学的/運動学的な構造から理解していきましょう。
⇩
<骨盤の解剖学的構造>
骨盤は3つの骨から構成されています。
(骨盤という骨ではないんです)
左右両側の寛骨が真ん中の仙骨を挟む構造となっています。
・恥骨結合:左右の寛骨が前側でつながる部分
・仙腸関節:仙骨と左右の寛骨が連結する部分
→結合と関節を介して,3つの骨が骨盤または骨盤帯として機能するわけです!
さらに,骨盤から出る3つのレバーとその機能を十分に考慮することも必要となります。
仙骨の上に連なる背骨(脊柱)のレバー,左右の寛骨と連結する股関節の2本のレバーです。
前述の「骨盤矯正だけではダメ」な理由の一つがここにあります。
骨盤を単体として診るのではなく,3つの骨の連結と連動であるということ,脊柱と股関節の3つのレバーを一つのユニットとして捉え,“腰部‐骨盤‐股関節複合体”として,対処していかなければならないということです!!
<骨盤の機能と運動性>
(※本当は,もう少し細かく分類されます)
〇骨盤は全体として,前傾/後傾,回旋や側屈運動が可能です。
〇仙骨はお辞儀(前傾方向/ニューテーション)と起き上がり(後傾方向/カウンターニューテーション)運動,斜軸での回旋運動が可能です。
〇寛骨は前方回旋と後方回旋が可能です。
↓
これらが,様々な動作の中で,
三次元的に機能し合い,正常な運動が遂行されるわけです!!
例)歩行動作
-前に振り出した足側(右)の寛骨は,わずかに後方回旋し,
-後ろで蹴り出す足側(左)の寛骨は,わずかに前方回旋し,
-仙骨は,斜軸で左に回旋し,
-骨盤は全体として,左に回旋します。
(これは,骨盤単体の運動です,,,)
↓
足の方向,つまり股関節の運動方向に連動して,骨盤の運動方向が変わる,仙骨(骨盤)の回旋方向に相反する方向に腰椎からの脊柱は回旋する。
というように,
“腰部-骨盤-股関節複合体”
として,正常な運動を理解しましょう!!
ただしかし,これらの運動性は数mmレベルの微細な運動の組み合わせで成り立っています。
この数mmの変化や偏位を正確に評価し,それを矯正すると考えるだけでも十分に難しいことであるということがお分かり頂けると思います。
以上は,正常な骨盤の構造と機能となります。
それでは,
◇骨盤の歪みって?
『骨盤矯正』の対象となる骨盤の歪み(マルアライメント)には,どのようなものがあるのかをご説明していきます。
とその前に,
産前や産後から骨盤の歪みが気になっており,『骨盤矯正』がしたい!
という方のために,
<出産前後の骨盤の変化>
をご説明します。
妊娠中は,女性の骨盤腔内には胎児がいるため,骨盤腔内を広げようとリラキシンというホルモンが分泌され,骨盤(仙腸関節)部の靭帯が緩くなります 。一方,産後はその必要がなくなるのでオキシトシンというホルモンにより緩くなった靭帯が数ヶ月かけて戻ろうとします。病院やクリニックによっては,産後の1ヶ月程度は骨盤ベルトの使用を勧められることもあると思いますが,こうしたことが理由となっています。こうして,多くの人の骨盤が元の形に戻っていきますが,まれに出産を繰り返しているなどの理由により,元に戻りにくくなっている可能性があります。
さて,それでは,
<骨盤マルアライメントのパターン分類>
をご説明していきましょう。
歪みのパターンは大きく2つに分類できます。
1.歪んで硬くなっているパターン。
2.緩くて歪みやすいパターン。
です。
1.は,後述する歪み方を見極めて,硬さを取り除くことによって,その矯正を図っていくことになります。
2.も歪み方を見極めることは一緒ですが,歪みを矯正して終わるのではなく,歪みにくくするための安定化エクササイズを取り入れていかなければなりません。
1.には,硬くしないための対処が!,
2.には,歪みにくくする安定化が!,
必要になります。
ここからも,「骨盤矯正だけではダメ」な理由がお分かり頂けるかと思います!
続いては,
<具体的なマルアライメントの分類>
です。
(※一般の方は,こんなにいっぱいあるんだぁと思ってください,,笑)
〇仙骨の斜軸での前方捻れ
〇仙骨の斜軸での後方捻れ
〇仙骨のニューテーション(両側性/一側性)
〇仙骨のカウンターニューテーション(両側性/一側性)
〇仙骨の垂直軸での捻れ
〇寛骨の前方回旋
〇寛骨の後方回旋
〇寛骨の外方回旋(アウトフレア)
〇寛骨の内方回旋(インフレア)
〇寛骨の上方偏位(アップスリップ)
〇寛骨の下方偏位(ダウンスリップ)
〇恥骨頭側偏位
〇恥骨尾側偏位
というように細かく分類することが可能です。
一見すると,同じような骨盤の歪みであっても,上記の分類の歪みが,様々な組み合わせによって形作られ,それが,硬い歪みなのか?緩い歪みなのか?までを判別し,さらに,骨盤から出る3本のレバーの機能までを評価してはじめて,
真の
“骨盤の歪み”(骨盤マルアライメント)
を把握することが可能となります!!
それでは,
骨盤が歪むとどうなるのか?
◇骨盤の歪みと症状との関係
をご説明していきましょう。
骨盤が歪むと,
「腰が痛い,,」
「骨盤周りが重だるい,,」
「ぎっくり腰のような,,」
「スムーズに立てない,,」
「背中が伸ばしにくい,,」
「猫背が気になる,,」
「カラダが硬い,,」
というような症状を感じることが多いのではないでしょうか!?
骨盤が歪んだ結果,周辺の様々な組織にストレスが加わり,当然,「痛み」として現れることが多いと思われます。
整形外科に行くほどではないんだけど,,でも痛いし,,変な感じ,,!?
(レントゲンでは歪みは分かりません)
産前や産後は,特にこのような症状をお持ちの方が多いのかもしれません!!
『骨盤矯正』は何度も受けているけど,,しっくりこない,,,
何回も同じ症状を繰り返している,,
毎年ぎっくり腰を起こす,,
という方も多いことでしょう!!
一般的に多い歪みのパターンは,片方の寛骨が前方回旋,他方は相対的に後方回旋のマルアライメントを有し(いわゆる骨盤が捻れている状態),寛骨の前方回旋側に痛みや不調を感じるということが多くあります。
骨盤が捻れると,仙腸関節周辺の靭帯(長背側仙腸靭帯や仙結節靭帯など)に過剰なストレスとなり痛みを誘発しやすくなること,捻れた結果,周辺の筋緊張や筋長が変化し,左右非対称な姿勢や動作となってしまうこと,などが,影響として考えられます。
さらに,それが習慣化し,長期化することによって,慢性痛につながったり,不良姿勢や動作が続く結果,肩凝りや頭痛へと発展する,下半身の関節痛を引き起こすというようなことも考えられるのです。
骨盤が歪んだ結果,または,骨盤が歪む原因までを考えて,適切な施術をしなければ,
やはり,「骨盤矯正だけではダメ」ということになりますよね!!
<サスペンションとダンパーの関係>
人類は重力下での活動を余儀なくされているため,人体に加わる力に対して,その衝撃を吸収するショックアブソーバーの機能が必要不可欠です。
では,人体におけるショックアブソーバー機能とは?
その機能が破綻するとどうなってしまうのか?
骨盤内の仙腸関節や恥骨結合は,前述の通り,動いたとしても数mmの世界です。
それに比べて,背骨(脊柱)や下半身の関節は非常に可動性が大きいため,動作の中では,その弾性を利用して,衝撃を分散したり軽減する機能を持っています(車でいうサスペンション)。
骨盤はというと,本来が硬い構造を有しているということで,その機能は,剛性を利用した衝撃吸収ということになります(車でいうダンパー)。
骨盤が捻れるということは,仙腸関節における関節面同士の適合性(恥骨結合における適合性)がズレているということです。
ズレた状態で,本来のダンパーとしての機能を果たそうとすると,周辺の靭帯や筋に非常に大きなストレスが加わることは容易に想像がつきますよね!!
そして,もう一つショックアブソーバーとしての機能を果たせない原因があります。
それは,緩くて歪みやすい(捻れやすい)骨盤の場合です。
想像してみましょう。
すべてが,バネ様のサスペンションのみの車を。
ちょっとした段差で,衝撃が加わると,バネは衝撃を一度は吸収してくれますが,反発して戻る,また衝撃が加わる,戻る,衝撃,戻る,,,
の繰り返しです。
弾性機能と剛性機能をバランス良く,配置することで,正常な機能と言えるわけですよね。
緩くて歪みやすい骨盤もそのショックアブソーバー機能が破綻しているため,様々な症状の原因となり得るということになります。
では、
どうすれば良いのか??
◇骨盤の矯正方法
をご紹介していきましょう。
前述の通り、
1.歪んで硬くなっているパターン
2.緩くて歪みやすいパターン
で大きく2つの方法に分かれます。
そして、
<具体的なマルアライメントの分類>のどのパターンに属するのかを見極め、適切なテクニックを選択していかなければなりません。
まずはじめに,骨盤矯正のための,
<徒手療法テクニック>
をご紹介します。
◇関節モビライゼーション
→これは,主に硬くなっている仙腸関節を「モビライズする(動かす)」ことで,その硬さを取り除くことと,骨を正しい位置や方向に「動くようにする」ためのテクニックです。
◇マッスルエナジーテクニック
→これは,筋の収縮力を利用し,関節の位置異常を修正するテクニックで,骨盤の歪みを矯正するための中心的なテクニックになります。
◇マリガンテクニック
→これは,主に,自動運動併用モビライゼーションを用いたテクニックになります。上記2つの方法で,硬さが取れ,位置が矯正された状態で,骨盤から出る3本のレバーを複合して,可動させたい場合などに用いられるテクニックです。
◇骨盤の安定化エクササイズ
→これは,主に緩くて歪みやすいパターンの骨盤に対して,位置を矯正した状態で,その安定化を図るための各種のエクササイズになります。
以上が,代表的なテクニックになりますが,これ以外にも硬い筋のストレッチングで柔軟性の向上を図ることや弱化した筋のトレーニングで筋力強化を図ることも必要な場合があります。
以上のテクニックは,どれも高度で専門的な知識と技術が要求されるものです。
何度も言っていますが,
「骨盤矯正だけではダメ」
なんです!!
というか,そもそも,
『骨盤矯正』って簡単なものではないんです!!
(何となく今までのお話で伝わっていればいいですが,,,)
真の『骨盤矯正』のための,
○ファーストステップは,
→歪みのパターンと分類を見極めること。
〇セカンドステップは,
→どの骨を?どの方向に?どの程度?矯正すればよいのかを見極めること。
〇サードステップは,
→最適なテクニックを用いて,正しい位置に矯正(修正)できること。
〇フォースステップは,
→骨盤が歪む原因を見極め,また歪まないようにすること。
歪んで硬くなっているパターンでも,
その硬さを取るだけではダメで,
そこが硬くなる原因が他にあるはずです。
そこの硬さによって,他部位にも悪影響が出ているかもしれません。
緩くて歪みやすいパターンでも,
位置を修正するだけではダメで,
そこが緩くなる原因が他にあるはずです。
さらには,
姿勢の影響はどうでしょう!?
動作的な癖があるのかもしれません!?
肩にカバンを掛ける側は決まっていませんか?
どちら脚を組みやすいでしょう!?
寝返りのしやすさに左右差はありませんか?
どっち向きで寝ることが多いですか?
などなど。
骨盤の歪みと一言で言っても,個人によって,パターンも違えば,分類も異なり,
そもそもの原因すら様々なわけです!!
『骨盤矯正』をパターン化された手技のみで対処しようとするのは,非常に当たりハズレが大きいでしょう。
真の
『骨盤矯正』
のためには,
個人の状態に合わせて,オーダーメイドでカスタマイズされたテクニックが必要ということですね!!
非常に長くなりましたが,
最後までお読み頂き誠にありがとうございました。
「いたみのないシアワセ!」
「できることのヨロコビ!」 をあなたへ。